「ティンカリング」という言葉を知っていますか?
tinkeringという言葉には、
「(間に合わせで)修繕する」「いじくり回す」という意味があります。
「下手な職人」という意味もあるそうです。
手を加え、いじくり回すことで、直したり、つくったりする。
下手でも、とにかくやってみるという心構え。
この「ティンカリング」という言葉は、
図工の時間の子供たちの姿を、
とても端的に表していると思います。
まず、自分の興味に従って、何か手を加える。
ところが、思うように上手くいかない。
じゃあ、これなら上手くいくかな? と再び手を加える。
そのように試行錯誤しながら、どうにかする。
何より大事なのは、
自分の興味・関心や好奇心に導かれて、つくりはじめること。
次に、その中で問題を発見すること。
そして、その問題の解決に向けて、持ちうる手を尽くして
どうにかする(解決する)こと。
例えそれが、大人からしたら、稚拙で、無駄で、間違ったやり方でも、
全力で認めて、応援してあげるべきでしょう。
自分で失敗しない限り、
成功する方法を見つけることはできないからです。
どこかに正しい方法があるのではなく、
自分でチャレンジする中で、(自分なりに)一番よい方法を発見する。
間違いや失敗はありません。
間違いや失敗だと自分で思うのなら、
どうすればいいのか、再び自分で考え始めるはずです。
それは「遊び」に似ています。
遊びの中に、正しい方法や失敗はありません。
だから安心して挑戦できる。実験できる。
その挑戦と実験の中で、
子供たちは必ず、何かを学んでいるはずです。
もともと、学びは、偶然発見する(セレンディピティ)という形で突然訪れ
あらかじめ計画できるものではないのかもしれません。
それでも、どのようなこと−−題材(テーマ)、材料、道具、
場の設定、時間の設定などなど…−−が、
子供たちをより充実した発見や学び(偶然も含まれるでしょう)に導けるか、
意図的に企図・設計することは、できるかもしれません。
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この日も、5年生は「ティンカリング」していました。
ベニヤ板ではうまく表せないヤシの葉をどう表すか悩んでいました。
「ベニヤ板以外も使っていいですか?」
それが、最善の方法ならもちろん!
さっそく紙テープを使って
ヤシの木の葉を表しました!
それをヒントにした子が
スズランテープで葉っぱを表し、
アルミホイルで鳥の卵を表しました。
こうして様々な材料の可能性に気がついていきます。
「この蝶番よりも大きく開くのありませんか?」
「引き出しの中を探してごらん」
「あ!いいの見つけちゃった!」
蝶番でフタを開閉できる小物入れをつくりました。
「目指していた塔はできたけど・・・何か足りないな」
1時間悩んだ結果、
自分のつくった塔を、見る人に楽しんでもらうために、
宝探しを仕掛けることにしました。
アリを捕まえる仕掛けをつくった!
うまく捕まえることができるか、実際に外へ出てテストしてみます。
うまくいったかな??
家でレゴブロックでつくってみてうまくいったから、
今度はベニヤ板でつくってみることにしました。
鍵をかけられる小物入れの完成!
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図工の時間では、
ティンカリングという遊びと学びの接点を大事にしたいと思います。
子供たちに、遊ぶことを認めたい。
その中で、自分でリスクをとり、挑戦し、実験すること、
自分で失敗し、解決することを認めたい。
図工の時間は、ものをつくることや表すことを教える時間ではなく、
ものをつくったり表したり(ティンカリング)する
直接体験と試行錯誤の時間を通して、
自分の学び方、自分の生き方を探っていく時間なのです。
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